漆喰について

漆喰について

漆喰について (原田宗亮)

 

今回は左官材の代表選手、漆喰についてお話します。

左官材は以前お話したように、
固化材(固めるためのもの)×骨材(砂など)や、
スサ×その他(保水材、装飾材、色粉などいろいろなものがあります。)
から構成されています。

漆喰は 漆喰=消石灰×スサ×糊 で構成されています。

施工例などはこちらから
Webカタログ:天然素材
https://www.haradasakan.co.jp/webcatalog/webcatasakan/webcataten/

消石灰


スサ





まず、固化材である消石灰についてです。

日本で石灰というと消石灰が一般的です。
作り方は石灰岩を塩焼きにしたものに水を加え、消化させて作ります。
私も消石灰の工場を見に行きましたが、
巨大な釜の上から石灰岩と塩、石炭を入れて焼き、
消石灰になったら下から取り出すという、想像よりも原始的な方法で作成しており、
とても興味深かったです。



精製をして非常に粒子の細かいものを左官用の石灰に使用しています。
グランドのライン引きや土壌改良の石灰もこの消石灰が原料です。
色が白であるというのも特徴で、純白であり白色の標準になるほどです。
性質は気硬性であり、空気中の二酸化炭素を反応することで固まります。
この性質が漆喰の特性、作業方法を決めています。

次にスサについて。
スサは作業性向上と亀裂防止のために入れます。
ワラを細かくしたワラスサが一般的ですが、
仕上がったときにワラが表面に出て、壁をよく見るとワラの色が少し出ています。

純白に近い漆喰壁を作りたい場合は、
ワラを漂白し、白くしたものと使うか、紙のスサを使用し、漆喰を作ります。
最近では化学繊維のスサがあり、その場合も純白に近い漆喰壁を作ることが出来ます。
(化学繊維なので好みがあるとは思いますが)



今でもワラスサを使用した漆喰が一般的であり、白い壁ですが、
塗装とは違い、味がある仕上がりになります。

そして、糊。左官でいう糊は保水性のために入れるものを言います。
石灰とスサだけでは塗り広げたときに乾燥が速くうまく仕上がりません。
保水性を持たせるため角又という海草の糊を入れます。
本来は角叉を煮て、糊分を抽出して混入しますが、
最近では粉角叉という糊分を抽出し乾燥させたものがあります。

昔ながらにツノマタを煮て糊分を抽出している模様


昔の漆喰ではフノリを使用している例もありますが、
角叉に比べると高価なため、あまり一般的ではなかったようです。
また、化学糊というものもあり、角叉の成分に近いメチルセルロースを使用することもあります。
(アイスの雪見大福の中に増粘材というものが入っていますが、あれがメチルセルロースです。冷たい中でも粘性を持たせ、お餅をやわらかくしています。もちろん食品として使用できる安心なものです。)

昔からの漆喰(最近では本漆喰と言う場合もあります)の構成は

消石灰×ワラスサや紙スサ×角叉糊

になります。
せっかく漆喰にするのであれば、やはり本物の素材にこだわりたいところですね。


漆喰の性質・特徴

漆喰は固化材の石灰が気硬性であるため、
空気に触れなければ固まらないため、材料を練り置き出来ます。
一般的に施工日よりも前に練り混ぜておいたほうが、
スサが馴染み、作業性や仕上がりがよくなると言われています。
余った漆喰もバケツなどに入れてビニールをかぶせ空気に触れないようにしておけば、
再度練り返して使用することが出来ます。
また、石灰の気硬性は空気中の二酸化炭素と反応し、固まります。
その時に一緒に空気中に浮遊している化学物質も一緒に吸着するため、
シックハウスに効果がある健康建材と言われています。
消石灰の反応は石灰が石灰岩に戻っていく過程であり100年くらいかけて進んでいくため、
吸着する効果も持続します。
硬化していく中で糊分が壁の中で消えていき、その部分が多孔質になるため調湿効果もあります。



もう一つの特徴は石灰が強アルカリ性であることです。
そのため、殺菌効果が高く、カビも生やしません。
昔から大切なものを保管する蔵の壁や湿気のたまる押入れに漆喰が塗られていたのは、
その効果を期待していたからなのでしょう。
漆喰は高温多湿の日本の気候に合った素材です。





変わった例では、
漆喰の白を生かし、スクリーンに利用することも出来ます。
適度に金ゴテで押さえた漆喰は、反射率がスクリーン利用にちょうど良いようです。



漆喰の外装使用について
お城や蔵など漆喰は昔から外部にも使用されていました。
漆喰は石灰が石灰岩に戻る性質を利用しているため、強度があり、丈夫です。
ただし、漆喰が吸い込む性質があるため、
日本の建物のように、
軒がしっかりと出ていて雨が直に壁をつたわっていかないような外壁は汚れにくいですが、
軒の出が少ない建物の場合、
雨だれが取れにくい汚れになってしまうこともあります。

対策としては

・漆喰をしっかり鏝で押さえ込んで鏡面に近くする
・漆喰に油を入れて撥水効果を持たせる
・漆喰に樹脂を入れて撥水効果を持たせる
・漆喰表面にトップコートを塗る

などがありますが、それぞれ100%防げるわけではないようです。
やはり漆喰を外部で使用する場合は軒の出をしっかりと出すことをお勧めします。





最近では酸化チタンによる光触媒の効果で、
日光によるセルフクリーニング機能を期待する外壁の使用もあるようです。
漆喰壁の上に光触媒のトップコートをかけることや、
日本の漆喰より酸化チタンが多く入っていると言われている西洋の漆喰(生石灰が主成分のもの)を
使用するということも効果があるようです。
(あくまで個人的な意見ですので、科学的な根拠はありません。)

また、外装なので汚れてはくるのですが、
漆喰壁は無機系のため、塗装や有機系サイディングなどの素材のように静電気は発生しないため、
汚れ方が違います。

漆喰  静電気を帯びないため、汚れを寄せ付けない。無機系のため耐候性がある
有機系 静電気を帯びるため、汚れを寄せ付けてしまう。メンテナンスをしないとボロボロになってくる

漆喰の場合、汚れてはきますが、それが味になってくるように古びてきます。

いずれにしてもせっかくの塗り壁です。
大事に扱っていただき、味わいのある漆喰を長く楽しんでいただければと思います。


参考文献:村樫石灰ホームページ


最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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