薄塗りでテラゾーの高級感!新商品クランチアート徹底解説
代表の原田です。
今回は新しい左官仕上げ「クランチアート(CRUNCH-ART)」のご紹介です。

近年、家具や什器製作において、シームレスで豊かな表情を持つ左官仕上げ材への注目はますます高まってきています。その中でもモールテックスやビールストーン、オルトレマテリアといった素材がその代表格として採用されてきました。
今回、新たな選択肢として「クランチアート」という仕上げが登場しました。
そのクランチアートについて詳しく解説します。
クランチアートとは何か?– 新世代テラゾー調仕上げ材の基本特性
クランチアート=テラゾー調の仕上げ材
専用のマイカを装飾骨材とした薄塗のテラゾー調の仕上げになります。
左官仕上げ特有の継ぎ目のないシームレスな仕上がりができ、角もシャープに仕上げることが出来ます。

ファニチャー仕様となっており、使用用途は「ショップの什器」「オフィスデスク」「カウンター天板」といった家具や造作に特化しています。
人が直接触れ、間近で見る家具のディテールを美しく仕上げることに着目した「塗り素材」です。
標準色は全21色で、選びやすくなっています。

設計士・デザイナーが注目すべきクランチアートの3つの強み(メリット)
強み1: 洗練された「テラゾー調」の意匠性
クランチアートのシームレスなテラゾー調の質感は、現代の商業空間やオフィスデザインにおいて非常に高い価値を持ちます。「継ぎ目のない美しい仕上がり」は、什器や家具がまるで一つの塊から削り出されたかのような、ミニマルで彫刻的な表現を可能にします。
骨材の表情が高級感を演出し、空間全体に洗練された雰囲気をもたらすこの意匠性は、ブランドの世界観を表現する店舗のカウンターや、企業の顔となるレセプションデスクなどに最適な選択肢と言えるでしょう。

強み2: 家具・什器に特化したシャープなエッジ表現
「角部分までシャープでエレガントな印象に」という表記通り、角(エッジ)をシャープに作りやすい仕上げ材です。

厚塗りのテラゾ仕上げは角をシャープに出すことが大変でしたが、薄塗仕上げのクランチアートでは比較的短時間でシャープなエッジのテラゾー調仕上げを作り出すことが出来ます。
クランチアートが家具・什器専用仕様として、ディテールの美しさを表現できる点は大きな強みです。シャープなエッジは、デザインに緊張感と精度を与え、空間全体の洗練度を格段に高める効果があります。
強み3: 品質を担保する「施工店会限定」という供給体制
クランチアートは「ジョリパット施工店会限定製品」であり、「施工難易度が高い仕上げ」に分類されています。

施工方法をYouTubeでアップしています。
よろしければご覧ください。
これは一見、施工業者が限定されるという制約に思えるかもしれませんが、設計士・デザイナー様の視点から見れば、これはメーカーが最終的な仕上がりの品質をコントロールし、担保するための極めて有効な仕組みです。指定された施工店のみが施工することで、設計者が意図した通りの高いクオリティが安定して実現されることは、プロジェクトを管理する上で大きな安心材料となります。
これらの強みを総括すると、クランチアートは特に意匠性とディテールの精度が求められる家具・什器プロジェクトにおいて、その真価を発揮する素材です。しかし、その一方で、採用を検討する際には必ず確認すべき重要な注意点も存在します。
採用前に必ず確認すべき重要事項と注意点(デメリット)
プロジェクトを成功に導くためには、素材の魅力的な側面だけでなく、その制約条件を設計の初期段階で正確に把握することが重要です。クランチアートには、その特性上、重要な制限事項がいくつか存在します。資料の注意書きに基づき、以下の点について必ず確認をお願いします。
水回りへの使用不可
クランチアートはキッチン天板、キッチンシンク、洗面天板、洗面シンク、浴槽などの水がかかる部位には使用できません。
用途は通常乾燥状態にある箇所に限定されています。ご注意ください。
高温多湿環境への非対応
高温多湿となるような条件下でのご使用は、膨れや剥がれが発生することがあります。透湿性のない塗膜が形成されるため、下地の水分の逃げ場がなく、膨れや剥がれが発生する場合があります。常時湿度が高い場所や温度変化の激しい環境での使用は避けてください。
室内においても直射日光で常時照らされ熱くなってしまう場所、ライトの熱などで高温になることが予想される場所などは使用を避けてください。
不燃認定の対象外
クランチアートは現在不燃認定の対象外の製品のため、内装制限が厳しいプロジェクト、特に建築基準法で不燃材料の使用が義務付けられている部位には採用できません。
(クランチアートはファニチャー仕様のため、そもそも家具・什器に塗ることを想定されていますので、不燃認定には関わらない施工範囲になりますが、念のためのお知らせになります。)
内装制限に関わらない施工部位(家具・什器)であれば使用に問題ありません。
用途の限定
あくまで「内装(什器・家具・カウンター天板)専用の仕様」です。
この素材は家具・什器に特化しており、壁面や床など、より広い面積への展開を想定した材料ではできません。(今後、施工用途を広げ、発展していく可能性はあります。)

下地クラックへの追従性小
これは左官仕上げ全般に言えることですが、下地や外部起因によるクラックの発生を防ぐことはありません。下地が動けば、その上の仕上げ材も動くため、表面にクラックが発生してしまいます。
クランチアートは可とう性はそれほど強くはありません。セメントモルタルよりは可とう性を持っていますが、割れにくい左官仕上げの代表格であるオルトレマテリアやモールテックスほどはクラックに対し、強くありません。
そのため、よりしっかりした下地処理が重要になります。
※可とう性とは物質がしなやかに曲がる性質を指しています。
カスタムメイドは不可
クランチアートは21色での展開になっており、その他の色、カスタムメイドは今の時点では製作できません。材料がプレミックスで混入済みの状態で出荷されるため、追加で何かを加えることも現時点では出来ない使用になっています。
カスタムメイドを行いたい、周りの仕上げ材と協調性を持たせたい場合にはオルトレマテリアやビールストーンなど他の仕上げを選択したほうがよいかもしれません。
家具系左官材との比較
クランチアートとオルトレマテリア、ビールストーンはどう違うのか?
クランチアート、オルトレマテリア、ビールストーンはいずれも天板や家具・什器に向いている左官仕上げ材です。
お互いにどういった特徴があるのか、表で比較してみました。
| クランチアート | オルトレマテリア | ビールストーン | |
| 主な適用領域 | 家具・什器・乾式カウンターに特化。 水回りへの使用は明確に不可とされている。乾いた環境での意匠性を追求した「一点集中型」。 | 壁面から床まで幅広い適用領域。キッチン、洗面、浴室など、より汎用性の高い適用範囲を持つ。「万能型」 | 通常は家具・什器・カウンター天板、床面など施工が多い(水平面施工型) (混入する骨材を小さいものにすれば壁面への施工も可能) |
| 意匠性の方向性 | 「テラゾー調」の表現に特化。高級感のある骨材の表情とシームレスな仕上げが核となる。 | モルタルライクなミニマルな表情から、骨材を混ぜたテラゾー調まで、より多様なテクスチャや表現の幅を持つ傾向がある。 テラゾー調以外にも様々なテクスチャがある。 | 本物のセメントテラゾーとしての意匠。風化してくる風合いもよい味わいとして好まれる。従来のテラゾーを割れにくくブラッシュアップしている。 |
| 施工と品質管理 | 「ジョリパット施工店会限定」というクローズドなシステム。品質の安定・均質化が期待できる。 | 「ライセンス認定」の施工店での工事となる。研修受講後の認定となるため、品質の安定・均質化がより期待でき、高いレベルの施工が保たれている。 | ビールストーン講習会を受講することで材料を購入できるようになる。ハードルが低いため、施工業者のレベルもバラバラであり、しっかりした施工業者を発注者が選定する必要がある。 |
| 塗り厚 | 2-3mm程度。 塗膜が薄いため軽量である。 | 2-3mm程度。 塗膜が薄いため軽量である。 仕上げの種類により5mm程度のものもある。 | 10mm以上の塗り厚。 重厚感のある仕上がりになる。大きい骨材も混入可能。汚れた場合に研ぎ直しも出来る。 |
| 色展開 | 全21色。 | 70色(標準仕上げの30色、着色トップコートの30色、天然顔料を用いた10色。)特注色対応も可能。 | モールテックスに準ずる64色が標準。特注色対応も可能。 |
| 骨材等 | 事前に混入している骨材のみ使用可能。(アレンジ施工は不可) | フラグメントシリーズなどの標準の研ぎ出し仕上げもあるが、特注対応が可能な点が魅力である。 | 標準の配合があるが、特注対応が出来る点が魅力である。骨材をお客様と一緒に混入するなどの施工方法も可能。 |
表のまとめ
クランチアート
既存の左官材料と競合する汎用材ではなく、「乾式環境の家具・什器」という特定の目的に対して、高い意匠性を発揮する「特化型素材」。薄塗りで軽量。
標準カラー、標準仕上げのみ対応。

オルトレマテリア
幅広い施工範囲と多様な意匠があるため、家具・什器だけでなく、壁、床まで合わせた仕上げを実現できる「万能型」。水回り、キッチンにも対応可能。薄塗りで軽量。
仕上げバリエーションの幅広さと特注対応力が魅力。

ビールストーン
従来のセメントテラゾーを割れにくく強いものにブラッシュアップした仕上げ材。セメント系の質感を活かした仕上げが特徴。「水平面施工」が主となる。水回り、キッチンにも対応可能。厚塗りで重厚。
標準配合も多いが、お客様と一緒に石を入れるなどの特注対応が魅力。

私の主観もありますが、この位置づけを理解していただき、その場所にあった的確な材料選定をしていただければと思います。
結論:設計者向け・クランチアート採用判断フレームワーク
設計者の皆様が、ご自身のプロジェクトにクランチアートを採用すべきか否かを迅速に判断するために、チェックリストをAIの力を借りて作成しました。
全ての項目に「YES」と答えられる場合はクランチアートは非常に有力な選択肢になります。
【採用判断のポイント】
- □ 用途は家具・什器・乾式カウンターか? (YESなら適合)
- □ 求める意匠は高級感のあるシームレスなテラゾー調か? (YESなら適合)
- □ 水回りや高湿度の環境での使用は無いか? (YESなら適合)
- □ 不燃認定は必須要件ではないか? (YESなら適合)
- □ メーカー指定の施工店による品質管理を重視するか? (YESなら適合)
新しい素材の登場は、私たちのデザインの選択肢を豊かにしてくれます。今回の記事が、皆様の的確な材料選定、より質の高い空間創造の一助となることを願っています。
クランチアート、オルトレマテリア、ビールストーン。
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この記事を書いた人
有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ























