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左官のミライ通信

デザインの常識を覆す!廃材コルクで実現するシームレスな左官仕上げの可能性

投稿日:2026年03月17日 (火)

代表の原田です。
今回はアップサイクルの話題、再資源化コルクを使った左官の仕上げ方についてです。

コルクの再資源化においてTOKYO CORK PROJECTという取り組みがあります。

※引用元:TOKYO CORK PROJECT WEBサイトより

日本では、年間でおよそ4億5000万本のワインが消費されていて、飲むときに抜かれたコルク栓は、これまではずっとゴミとして捨てられてきました。しかし、天然素材のコルクは人にも環境にも優しいことから、石油由来素材の代替として社会のさまざまな分野で、利用価値が大きく上がろうとしています。
TOKYO CORK PROJECTでは、捨てられるコルクを回収、適切に再生加工し、素材として求められる形で提供する活動をしています。

コルクコースター
再生品の例:コルクコースター

そもそもコルクは木の皮を9年~10年周期で収穫するものです。
木を伐採しないのでエコな素材とも言えます。
しかし、そのコルク自体は日本では生育できないため、全て輸入しています。
だから無駄にせず、再生していこう!
東京という大消費都市を再生資源を使うことで資源の宝庫としたい。
そういう考え方の元でこのプロジェクトを運営しています。

そのリサイクルコルクを使ったインテリア製品やプロダクトを製作しており、今回、左官材に活用できないだろうかと当社からお話を持ち掛けて、「廃材コルク×左官」の試作に至りました。

試作の完成品の一部がこちら。

コルク入りのオルトレマテリア仕上げ
(オルトレマテリアコルク入り仕上げ)

コルクの色、コルクの肌が出て興味をそそられる仕上がりになりました。

廃材コルクを左官材に混ぜる仕上げの最大の魅力は、これまでのコルク材では難しかったシームレスなコルク仕上げが実現できる点にあります。

その実現に向けて、今回はオルトレマテリアというベース材を用いて「廃材コルク×左官」の試作を行います。

こちらが廃材コルクの粒です。

廃材コルク粒

オルトレマテリアの基材は白に近い色なので、コルクになじむように近似色に調色します。

調色用の色粉と白いオルトレマテリア基材

ベースとなるオルトレマテリアをコルク色に調色します。

顔料を入れて混ぜ合わせ、ベース材を作ります。

調色したオルトレマテリア

この調色したオルトレマテリアをコルクと混ぜていきます。

廃材コルク粒を混ぜたオルトレマテリア

見本板に塗り付けていきます。

コルク粒入りのオルトレマテリアの塗り付け

塗り付けが終わった状態がこちら。

コルク粒入りのオルトレマテリアの塗り付け

少しザラザラしていてコルクの粒感が分かります。

トップコートを塗って仕上げになります。

コルク入りオルトレマテリアにトップコート塗布

こちらが完成品。

コルク入りオルトレマテリアサンプル

少しコルクの粒が表面に出てザラザラな表情になりました。
(乾燥前なので本来の色味とは異なります。)

今回はこの仕上がりも含めて4パターン試作をしました。
1.鏝塗り仕上げ
2.鏝塗り+研磨仕上げ
3.よりきめ細かい仕上げ
4.大きな粒を入れた仕上げ

それぞれの仕上がり感です。

1.鏝塗り仕上げ

鏝塗り仕上げのコルク入りオルトレマテリアサンプル
(オルトレマテリアコルク入り鏝塗りSP9627)

乾燥時に左官材が痩せ、コルクの粒が浮き出ています。
コルクの粒が際立ち、まるで土壁のような素朴で温かみのある仕上がり。
自然素材の風合いを最大限に活かしたい空間に最適です。

2.鏝塗り+研磨仕上げ

鏝塗り+研磨仕上げのコルク入りオルトレマテリアサンプル
(オルトレマテリアコルク入り鏝塗り研磨SP9628)

研磨を施すことで、コルク板のような滑らかな質感に変化します。
洗練されたモダンな空間にも馴染む、上品な印象です。

3.よりきめ細かい仕上げ

きめ細かい仕上げのコルク入りオルトレマテリアサンプル
(オルトレマテリアコルク入りSP9629)

ザラザラ感を抑え、落ち着いた風合いに。
フラットに近いですが、わずかな凹凸が豊かな表情を生み出しています。

4.大きな粒を入れた仕上げ

大きな粒のコルク入りオルトレマテリアサンプル
(オルトレマテリアコルク入り大きな粒を入れた仕上げ)

大きな粒を埋め込むことにより、よりコルク感を感じる仕上がりに。
表面を研磨するテラゾ工法を応用して仕上げており、アップサイクルテラゾ®の一つのバリエーションにもなります。
硬い骨材ではなく、柔らかいコルクを使用することで表面が柔らかく、やさしい肌ざわりが特徴です。

それぞれ興味深い表情になりました。
廃材のコルク粒を左官材と組み合わせることでこのようなメリットが考えられます。

  • 一体感のある空間演出: テーブルの天板から立ち上がりまで、コルクの質感を途切れることなく連続して表現できます。これにより、空間全体に統一感と奥行きが生まれ、洗練された印象を与えます。
  • 継ぎ目のない美しい仕上がり: 左官仕上げならではの特性を活かし、広範囲にわたる面でも継ぎ目なく仕上げることが可能です。従来のコルクタイルでは避けられなかった目地がなくなり、より滑らかで美しい表面を実現します。
  • 自由な形状への対応: コルクと左官材を組み合わせることで、曲線や複雑な形状にも柔軟に対応できます。既存の建材では表現が難しかった、意匠性の高いデザインも実現可能です。

また、メリットになりえるかどうかの部分にはなりますが、軽量であるという点も興味深いところです。通常、左官仕上げは砂や石など重量骨材を用いるため、厚みが増すほど重くなりますが、コルクが主要な骨材になっていると厚みがあっても驚くほど軽いです。
その軽さも何かメリットになっていければと思います。

これらの試作を通じて、コルク廃材が持つ無限の可能性を再確認しました。

インテリアの試作として座面にコルク左官を塗った椅子も試作しました。

完成品がこちら

コルク入りオルトレマテリアで座面を仕上げた椅子
(コルク左官仕上げ 椅子の座面)

これは塗った後、研磨をし、オイルを塗って仕上げています。
研磨前はこの表情でした。

研磨前のコルク入りオルトレマテリアの座面

研磨をする工程では少し工夫が必要です。

動画でご覧ください。

コルク入りオルトレマテリアで座面を仕上げた椅子

コルク感が出ていて、なかなか面白い表情になりました。
コルクの質感を殺さず、フラットにしていく。
研ぎ具合の絶妙なタッチが必要でした。
今後、このシームレスがコルク入り左官仕上げが様々な場所で活用されればと思います。

コルク入りオルトレマテリアで座面を仕上げた椅子

サステナビリティとデザイン性を両立させたいとお考えの空間デザイナーの皆様に、この新しい左官仕上げを是非取り入れていただきたいと考えています。

まだ試作段階ではありますが、この新しい素材が、お店や施設の意匠として、空間に新たな価値をもたらすことを確信しています。
コルクがもたらす、左官の新たな可能性。
あなたのデザインの一つに取り入れてみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

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