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左官のミライ通信

木下地でも割れさせない!エポキシで作る床工法「スリックシールド」

投稿日:2025年09月16日 (火)

代表の原田です。
空間デザインの現場で、木下地に左官仕上げをする時、頭を悩ませることはありませんか?

せっかくデザインした空間も、床のひび割れ一つで台無しになってしまう。
しかし木下地の場合、下地の動きで割れが起こりやすくなります。
そんな悩みを解決してくれるのが、今回ご紹介するエポキシメッシュ工法の「スリックシールド工法」です。(スリックシールド工法は有限会社原田左官工業所の商標です。)

エポキシメッシュ工法の「スリックシールド工法」を施工する左官職人さん

木下地の弱点、それは「ジョイント」

木下地の床が割れる一番の原因、それはジョイント部分です。

木下地の床

パーティクルボードにベニヤを重ねるなど2層張りしても、どうしてもジョイント部分は動きやすく、そこに左官材を塗ると割れてしまいます。

「ジョイント」の「せん断」の動きで割れる

木下地のジョイントは剪断の動きで塗材にクラックが入る

弾性のある仕上げ材を使用しても、ジョイントの動きは「せん断力」(上下の動き)なので、どんなに弾性がある材料でも、ゼロタッチになってしまい、割れてしまいます。
(紙を裁断機で切るようなイメージを持っていただけると「せん断」の割れについてイメージしやすいかと思います。)

「スリックシールド」でジョイントを一体化

「スリックシールド」は、ジョイント部分にガラスメッシュを貼り、エポキシを流し込むことで、下地をジョイントを含めて一体化させる画期的な工法です。

ガラスメッシュを敷きこんだ木下地の床
(ガラスメッシュを敷きこんだ状態)
ガラスメッシュを敷きこんだ木下地の床にエポキシを流し込み施工中
(エポキシを流し込み施工中)

エポキシはクリアでレベリング効果のある材料です。
水平面であれば容易に塗り広げることが出来ます。

「スリックシールド」は割れに対して、発生しないという保証を伴うものではありませんが割れに対してかなりの強さを持つという認識をしていただければと思います。
この工法を行ったとしても下地の動きがそれ以上に大きければ、残念ながらクラックは発生してしまいます。
また、ジョイントのクラックに対しては下地の作成、下地処理の方法以外にも様々な要因がありますので、その点をご了承いただければと思います。

「スリックシールド工法」の効果

通常のベニヤ板とスリックシールド工法を施したベニヤ板を比較してみました。

ベニヤ板そのままの状態ですと、人が乗ることでたわみに耐えられず、ベニヤ板が割れてしまいます。

ベニヤを「スリックシールド工法」でエポキシとメッシュを施したことで強度がアップ。
たわみ・曲げに対して非常に強くなり、ベニヤが割れなくなりました。

このように「スリックシールド工法」を施すことにより、たわみ・曲げに対しての強度が格段に上がります。
その上に微弾性の左官仕上げを施工することで割れにくい床左官仕上げを作ることが出来ます。

使用するエポキシの魅力

使用するエポキシ材料は現場環境にも施工者にも使用するメリットのある材料です。

  • 低臭
    エポキシを塗り広げても、臭いが気にならない低臭タイプです。
    作業者にも優しく、室内の作業でも比較的容易に使用することが出来ます。
  • 道具を灯油等で洗える
    シンナーを使用しなくてもOKなので、後片付けも楽、作業環境に溶剤の臭いをほぼ出しません。
  • レベリング効果あり
    適度なレベリング効果で均一な仕上がりが期待できます。
スリックシールド工法を施工中の床

施工実例

スリックシールド工法を用いた住宅床施工の実例紹介です。

下地施工

スリックシールド工法で下地施工中の住宅床
木下地の上にスリックシールド工法を施工

その上に原田左官オリジナル仕上げ「ポリーブル」を施工

スリックシールド工法の下地にポリーブルで施工した住宅床
(床ポリーブル仕上げ)
スリックシールド工法の下地にポリーブルで施工した住宅床
スリックシールド工法の下地にポリーブルで施工した住宅床
スリックシールド工法の下地にポリーブルで施工した住宅床

柔らかいグレージュ色という色合いもあり、お客様からは絨毯を敷いたような床になったと高い評価を頂きました。

下地の状態がこちら

住宅床の木下地

この上にスリックシールド工法を行い、原田左官オリジナル仕上げ材「ポリーブル」を施工しました。

仕上がり

スリックシールド工法の下地にポリーブルで施工した住宅床
スリックシールド工法の下地にポリーブルで施工した住宅床

小上がりの部分を木下地で上げ、ポリーブルを施工しています。
素足で歩くと気持ちいい滑らかな仕上がりです。

「スリックシールド工法」+「弾性左官仕上げ」

この組み合わせで住宅木床の上に左官仕上げが可能になります。
この工法によりシームレスで滑らかな床を作り出すことが出来ます。

空間設計・デザイナーの方へ

WEB等での情報発信の発達に伴い、空間デザインの世界でも差別化をしていくというのが難しい時代になりました。だからこそ、新しい技術を取り入れ、他には無いより良い空間を創り上げていきたいと思っています。

スリックシールド工法は、あなたのデザインの幅を広げ、お客様の満足度を高める強力な武器になります。
ぜひ一度、試してみてください。
きっと、その効果に驚くはずです。

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この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

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