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左官のミライ通信

ナノテクノロジーのトップコート

投稿日:2016年02月29日 (月)
カテゴリー: 工法・素材解説

今回は最近話題になりつつある「ナノテクノロジーによるトップコート」についてのお話です。

当社でよく施工する商業施設の現場ではモルタル素地仕上げがよく使われています。
モルタルの風合いを活かし、そのままを仕上がりにするものです。
モルタルの自然なムラ感が好まれ、数多く施工するのですが、
トップコートを何にするかがいつも検討事項でした。

モルタルの金ゴテ押さえのままだとよく歩く部分はだんだんと削れてきて、 中の砂がポロポロと出てきてしまうので、何かトップコートをかける必要があります。
しかし、厚い塗膜のトップコートをかけてしまうと折角のモルタルの風合いを殺してしまいます。

モルタルの風合いを活かし、出来るだけモルタルのままで見せたい(何も塗っていないような状態)でも表面は保護したいというのがモルタル素地仕上げに多いご要望でした。

モルタル面を汚れや削れから保護するためには、透明な表面保護材を塗る必要があります。
色々な試行錯誤の結果、クリアのトップコートも現在では第三次世代と言われるように進化をしてきました。

では、過去のものから振り返ってトップコートを考えてみたいと思います。

第一次世代(塗膜タイプのトップコート)

従来のトップコートの考え方は強い塗膜を作ってモルタル層を保護するというものでした。
(例えば、ウレタンクリアコートやクリアーワックスを塗るなど)厚い塗膜がモルタル層を守るため、
初期の耐久性に優れているのですが、塗膜がツヤありのものなので、仕上がりがテカテカになってしまうという弱点もありました。

また、塗膜が有機系のため、蛍光灯の灯りや紫外線で黄変してきたり、透明な塗膜が汚れてきたりするという問題点もあり
ました。
メリットとしては施工が簡単なものが多く、塗膜を剥がして塗り替えることも出来るため、取り扱いがしやすいという点もあります。

第二次世代(浸透系表面保護材)

光触媒トップコート

塗膜系のトップコートの弱点を解消するため、 モルタルに浸透して強度を出すというトップコートが出ました。(厳密に言うと表面強化材)。

このシリーズの特徴はモルタルの表面の微細な孔に浸透していき固形化する、セメント中のカルシウムと反応して表面を硬くし、
緻密にすることで強度を出し、表面も皮膜をするというものです。

このシリーズの弱点は分子による結合で疎水性を出しているので、紫外線や条件により、分子の結合が切れてしまうと効果がなくなってしまうことです。

疎水性タイプのものが多いですが、光触媒コートなどの超親水性の考え方のコーティング材もあります。
光触媒のコーティング材は日の当たることでないと機能が発揮しにくいという点があるため、
屋外は向いていますが、屋内にはあまり向いていないようです。

また、第一次世代のトップコートに比べて施工が難しいものが多く、施工に関しても手袋やマスクなど充分な装備が必要なものもあります。

第三次世代

ナノコート

今回、お勧めするナノテクノロジーによるトップコートは モルタル素地の細孔に浸透して表面を保護し、撥水をしています。
孔を塞ぐのではなくナノ粒子でコーティングすることで水や汚れをはじきます。
ナノ粒子が素地内部まで浸透するため、磨耗の影響を受けずに効果が長持ちします。

また、ナノテクノロジーのトップコートの最大の特徴は、塗布後のモルタルの質感が変わらないことです。
塗布したか、していないか分からないくらいに質感が変化しません。
そのため、モルタルの自然な風合いがそのまま活かせます。
また、施工的にもローラーや刷毛で行え、匂いも無く、比較的簡単に施工することが出来ます。

難しい理論よりも映像で見ていただくほうが分かりやすいので、
今、流行のモールテックスに塗って実験をしてみました。

右側がナノコート塗布面、左側が未処理面です。見本を立てかけて霧吹きで水をかけています。
塗布面と未処理面はまったく素材感の違いがありません。
しかし、これだけ撥水の効果があります。
左側の未処理面は水を吸い込んでどんどん濡れ色に変化していますが、 右側は水をはじいて色がまったく変わり

先ほど述べたようにナノコートは分子の結合での塗膜ではないため、効果が長持ちします。
メーカーさんの数値では8年経過しても、95%の機能を保っているそうです。

このような撥水効果が長期間保持できます。

質感が変わらず、効果が長持ちするため、
当社でも人造石研ぎ出しの流しやモルタルの什器、
今流行のモールテックスの表面保護などにも使用しています。

是非、第三次世代のトップコート、ナノコートをお勧めします。

最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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