左官仕上げの魅力を提案、書籍オルタナティブの紹介

左官仕上げの魅力を提案、書籍オルタナティブの紹介

今回は左官の魅力を伝える書籍「オルタナティブ」の紹介をします。

近年、左官仕上げが見直されていると実感します。

珪藻土や漆喰に代表される左官材の調湿効果が認められ、室内空間での採用が増えました。
併せて左官仕上げの持つハンドメイド感や手仕事の良さが再認識され、商業施設やパブリックスペースで左官の仕上げを見ることも多くなりました。
また、現場で人が塗って仕上げるからこそできるカスタムメイドな仕上げ、オリジナリティーが出しやすいという点も左官の良さとして認められています。
左官が業界を挙げて長年コツコツとPRしていった結果が実を結んできたと肌で感じています。

そんな左官の良さを原田左官の目線から紹介する書籍を作りました。
タイトルは「オルタナティブ」です。

原田左官書籍「オルタナティブ」表紙
(原田左官書籍「オルタナティブ」)

オルタナティブには代案・代替という意味があります。
現在あるものの代わりに選べる新しい選択肢とも言い換えることができます。
左官と言えば本来、土壁や漆喰に代表される伝統的な仕事。一方、現代の左官の中心は大型建築や住宅現場でコンクリートやセメントモルタルを扱い、壁や床を平らに仕上げていくことです。

原田左官はそのどちらでもないジャンルの左官の仕事をしています。
左官の仕事を伝統建築に限らず、現代の左官の中心に拘らず活動をしていった結果、店舗・商業施設の左官を中心に行うという新しい選択肢を選ぶオルタナティブな左官になりました。
左官の仕上げは手仕事であるが故、選択肢も幅広いです。
当社では30年以上前に女性左官が誕生し、漆喰に口紅やアイシャドーを混ぜるという仕上げ方法を考案しました。
既成の枠にとらわれず、自由な発想を取り入れていく当社の姿勢を表す言葉としてタイトルを「オルタナティブ」にしました。

この書籍では当社が示す「オルタナティブな左官」を3つの章に分けて紹介しています。
・思考の余地
・許容する素材
・加味される技

■思考の余地

思考の余地では左官の作るまでに考える余地がある面白さを提示しています。
南青山のTime&Style Atmosphereでは時間のない中、同社の代表の吉田氏と現場でアドリブ的に仕上げ方法を決めていった例を紹介しています。

南青山Time&Style Atmosphereの内装
(南青山Time&Style Atmosphere)

微妙な鏝をニュアンスを吉田氏が理解し的確に指示していただいたおかげで、当社としても良い雰囲気の左官仕上げを行うことができました。

南青山Time&Style Atmosphereの内装

この仕上がりを見るたびに左官はデザイナーと職人の協働の仕事だと実感します。

南青山Time&Style Atmosphereの内装

■許容する素材

許容する素材の章では左官や左官の素材があらゆるものを受け入れて無限に表現の幅を広げられるという懐の深さを伝えています。

施工例としては天然の土に微量の樹脂を混ぜて仕上げた神田ポートビル。

神田ポートビルの風土仕上げ外壁
(神田ポートビル:仕上げ「風土」)

土壁と言えば天然のものですが、ナチュラル感を損なわない樹脂を微量に入れることで現代建築の外壁にも耐えられる強度を持たせる仕上げが出来ました。

神田ポートビルの風土仕上げ外壁

土の京錆土、砂は京都の城陽砂を混ぜています。
天然の土の色は力強いですね。

その他にも恵比寿のNouvelle Ethnique ATHAの金属メッシュを埋め込んだ仕上げ。

恵比寿Nouvelle Ethnique ATHAの金属メッシュ掻き落とし仕上げ
(Nouvelle Ethnique ATHA:仕上げ「金属メッシュ搔き落とし」)

恵比寿Nouvelle Ethnique ATHAの金属メッシュ掻き落とし仕上げ


お茶の葉を入れたCadeau natureのビールストーン仕上げも紹介しています。

Cadeau natureのお茶の入りビールストーン仕上げ内壁
(Cadeau nature:仕上げ「お茶の入りビールストーン」)

Cadeau natureのお茶の入りビールストーン仕上げテーブル脚

現在、左官はストーリーを語る素材としても採用されています。
このお店ではテラゾの中にお茶の葉を入れることでブランドのメッセージを伝えています。

お茶の入りビールストーン仕上げ

左官が器となってその中にメッセージを入れ、伝える。
厚みを付けて仕上げることのできる左官はこのように許容する素材としての魅力があります。

この章ではほかにもアーモンドを入れた仕上げや色を重ねた塗り版築の仕上げを紹介しています。
作業風景も一部紹介していて、ブックホテル「箱根本箱」での黄色いガラスを混ぜる施工の様子を紹介しています。

箱根本箱の黄色ガラス入りビールストーン仕上げ。書籍「オルタナティブ」より抜粋
(書籍「オルタナティブ」一部抜粋 箱根本箱:仕上げ「ビールストーン黄色ガラス入り」)

■加味される技

3つ目の章は加味される技。
左官は技術と技能の組み合わせ。二つの融合が進化をさせて可能性を広げていったことを伝えています。
技術はテクノロジー、記録し他社に伝えることができます。
一方、技能はスキル。自らの体で体得したものであり、人に宿るもの。
この技術と技能が組み合わさって左官仕上げは発展をしていきました。
左官は技術だけでなく、技能が加わるからこそ、完全コピーは出来ず、大量生産には向かない仕事です。
大量に作ることができないため、工業化を目指す社会においては遅れたものとして捉えられてきましたが、サスティナブルを目指す社会に変わっていく今の時代には求められていく仕事ではないかと感じています。

この章ではそんな左官の技の部分を紹介しています。
施工例としてはNODEオフィスの壁面。

麹町NODオフィスの珪藻土立体プリーツ仕上げ壁面
(麹町NODE:仕上げ「珪藻土立体プリーツ仕上げ」)

麹町NODオフィスの珪藻土立体プリーツ仕上げ壁面

珪藻土を立体的に仕上げています。
こちらはトンネルのように天井・壁を繋げた中目黒の住宅のドイツ漆喰仕上げ。

中目黒住宅のドイツ漆喰仕上げ
(中目黒住宅:仕上げ「ドイツ漆喰」)

左官の技を伝える章になっています。

今回、沢山の方のご協力を頂いてこの書籍を完成させることができました。
また、施工例を集めていく上で原田左官が色々な方にお声がけいただき、仕事の機会を頂いていることを改めて実感しました。
お客様、協力していただける皆様、本当にありがとうございます。

現在、人間の時代に戻ってきていると感じることが多くなってきました。
楽器でも家具でも、時には車や機械など工業製品でも手間をかけた良いものが改めて評価される時代になったと感じています。

それは昔のものは良かったというアンティークの価値だけではなく、デザインの美しさや機能美による面も多いと思います。
私はアンティークなものだけでなく、今の時代にも手間をかけて作った良いものの再評価が必要だと感じています。
手間をかけることが全ていいことではありませんが、選ばれる選択肢が増えている現代においては手間をかけて仕上げた分の価値を伝えることも出来るのではないかと考えています。
手間をかけて価値をしっかり伝えること。つまりそれは人間の評価、人の価値を上げることにもつながるのではないかと思っています。

原田左官は職人さんが腕をふるうことで支えられている会社です。
職人さんたちが現場で技能を披露し、初めて会社が成り立ちます。
職人さんたちを大事にし、腕がふるえる場所をこれからも協力して作っていきたいと考えています。
原田左官ではそのような思いを込めて、今の時代で評価される左官・タイルの仕事を重ねていけるよう、今後も人を育てることに力を入れていきます。

書籍「オルタナティブ」は大型書店をはじめ、Amazon等ネットショップ、またはグループ会社のミコレアークのECサイトでも販売をしています。
書籍の内容にご興味のある方は是非ご覧いただければと思います。
ミコレアークECサイト書籍紹介のページはこちら
http://shop.micolearc.com/?pid=164103909


この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

お問合せ先

有限会社原田左官工業所
113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1
電話番号:03-3821-4969 FAX番号03-3824-3533

左官のミライ通信「Sakan Concierge(左官案内人)」

発行元:有限会社原田左官工業所・株式会社エイチアール
発行責任者:有限会社原田左官工業所 原田宗亮
HomePage:http://www.haradasakan.co.jp/
メールアドレス:sakan@haradasakan.co.jp

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