設計士に役立つ情報をお届け

左官のミライ通信

アップサイクルテラゾ®とは?|想いを刻むサステナブルな施工をご紹介

投稿日:2025年05月13日 (火)

「アップサイクルテラゾ®」とは、廃棄物をテラゾの骨材として再利用し、新たな価値を持たせる仕上げです。テラゾの持つ再構築という側面に、素材への想いや記憶を重ね合わせることで、意匠性を一段と上げることができます。

アップサイクルテラゾとしてプラスチックコップ廃材を粉砕して混ぜてビールストーンで施工したベンチ

素材の組み合わせや磨き方によって、廃材がデザイン性の高い模様として生まれ変わることもできます。美しさとサステナビリティを両立させた、新しい価値のある仕上げ「アップサイクルテラゾ®」を施工事例とともにご紹介します。

  • アップサイクルテラゾ®とは?
    • テラゾとは
    • 入れる素材から表現できる意思
  • アップサイクルテラゾ®の特徴
    • 少しずつ広がっているアップサイクルの素材
    • アップサイクルで取り入れることができる素材
    • 商標登録
  • 施工事例を素材ごとに紹介
    • くるみの殻
    • もみ殻
    • プラコップ
    • タイル
    • 大理石、陶器
    • 歯車、金属片
  • まとめ


アップサイクルテラゾ®とは?

テラゾとは

研ぎ出し仕上げの一種であるテラゾ。
骨材のサイズによって、小さい骨材のものは人造研ぎ出し仕上げ(人研ぎ)、大きいものはテラゾ(現場テラゾ)と呼ばれてきました。
しかし近年では材料や技術の進歩により、その境界線は曖昧になりつつあります。
薄くても割れにくく?がれにくい「ビールストーン」は研ぎ出し仕上げの可能性を広げ、その意匠性の高さから、一時期減少していたテラゾが再び注目を集めています。

ビールストーンの研磨

骨材のサイズと色を自由に組み合わせることで、現代的な空間デザインも可能です。

ビールストーンカラーチャート
ビールストーンカラーチャート
ビールストーンカラーチャート
(ビールストーン カラーチャート)

入れる素材から表現できる意思

壁や床、什器など、日常で触れる仕上げ材は、人々の目に触れる機会が多いものです。特にエントランスや店舗内装においては、その印象が空間や企業のイメージを左右します。だからこそ、アップサイクル素材を空間に取り入れることは、言葉を超えた、力強いメッセージとなります。

仕上げに含まれる廃材の量は限られていますが、空間に意思を刻むことで、その小さな存在が大きな意思表示になります。


アップサイクルテラゾ®の特徴

少しずつ広がっているアップサイクルの素材

当社ではお客様の想いや企業の廃棄物など、様々な素材を活かしたアップサイクル仕上げを施工しています。その始まりは、お客様からのアイディアや素材との出会いからです。
企業の廃材、現場の端材など、廃材になるものは人によって様々。それがその人や企業の特別な仕上げへと変わっていきます。

アップサイクルテラゾ施工に混ぜて使用する歯車と金属片

アップサイクルで取り入れることができる素材

お客様の想いや企業の廃棄物といった、ユニークな素材との出会いから、新たな可能性を日々模索しています。
試作する中で柔らかい素材から硬質な素材まで、様々なマテリアルをアップサイクルテラゾ®に取り込みを試しています。お茶の葉やコーヒーの出涸らしといった意外な素材も、新たなデザインの源泉になるかもしれません。

アップサイクルテラゾのサンプル作成に使用した様々な素材

商標取得

「アップサイクルテラゾ®」は原田左官の商標登録商品です。
これからも新しい仕上げを通して、持続可能な建築・デザインに貢献してまいります。

「アップサイクルテラゾ」商標登録ロゴ。登録:6900483(商願2024-090015)
登録:6900483(商願2024-090015)

施工事例を素材ごとに紹介

くるみの殻

オフィスのカフェスペースのカウンターに施工した事例です。
暖色の骨材をまぜた柔らかい印象の中に、ちょっとしたインパクトが生まれます。

胡桃の殻を混ぜたアップサイクルテラゾのビールストーン
くるみの殻を使ったアップサイクルビールストーンで施工したカウンター立ち上がり
(施工事例 カウンターの立ち上がりに施工)


撮影:生熊友博

もみ殻

おにぎり屋さんのレジカウンターに施工した事例です。
ふと視線を落とした時に気付く細かなこだわりが映える仕上がりになっています。

籾殻を混ぜたアップサイクルテラゾのビールストーン
カウンター側面に施工した籾殻を使ったアップサイクルビールストーン
(施工事例 カウンターの側面に施工)


撮影:生熊友博

プラスチックコップ

オフィスのベンチに施工した事例です。
運営している店舗で使用していたプラスチックコップが、エントランスで人目を引く爽やかな印象になりました。

プラスチックコップ廃材を粉砕して混ぜたアップサイクルテラゾのビールストーン
アップサイクルテラゾとしてプラスチックコップ廃材を粉砕して混ぜてビールストーンで施工したベンチ
(施工事例 ベンチ全体に施工)

タイル

上位会員顧客向け施設のテーブル天板に施工した事例です。
丸い天板と柔らかな色合いで落ち着いた雰囲気に仕上がっています。

アップサイクルテラゾとしてタイルの廃材を粉砕して混ぜてビールストーンで天板を施工したテーブル
アップサイクルテラゾとしてタイルの廃材を粉砕して混ぜてビールストーンで天板を施工したテーブル
(施工事例 テーブルの天板に施工)

大理石・陶磁器

商業施設のベンチに施工した事例です。
サステナブルな商品を取り扱う店舗のフロアに取り入れられ、フロアに統一感も感じられます。

アップサイクルテラゾとして大理石と陶磁器を混ぜてビールストーンで施工したベンチ
大理石や陶磁器を使ったアップサイクルビールストーン施工のベンチ
(施工事例 商業施設ベンチに施工)

撮影:阿野太一

歯車・金属片

オフィスビルのエントランス床に施工した事例です。
生産した廃棄されてしまうパーツを混ぜ込むことで、企業の個性とサステナビリティへの意識が一目で分かります。

アップサイクルテラゾとして歯車と金属片の廃材を混ぜてビールストーンで施工した床
アップサイクルテラゾとして歯車と金属片の廃材を混ぜてビールストーンで施工したオフィスビルのエントランス床
(施工事例 オフィスエントランス床面に施工)

まとめ

再評価の進む研ぎ出し仕上げと、サステナビリティへの意識の高まり。この二つの潮流が交わる場所に、「アップサイクルテラゾ®」は存在します。

お施主様などからサステナブルなご提案をいただくことが増え、新しい素材で日々試作を重ねています。様々な表情の仕上げが増えていく中で、その背景の物語にも触れることができる仕上げにこれからも携わりつつ、環境保護に貢献できると幸いです。

もし取り入れてみたい素材やアイディアがありましたら、ぜひお問い合わせください。

お問い合わせはこちらから
お仕事に関するお問い合わせフォーム

この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

ページの先頭に戻る