土佐漆喰について

土佐漆喰について

土佐漆喰について(原田宗亮)

 

今回は土佐漆喰についてのお話。
近年、仕上げ材として改めてクローズアップされている漆喰。
その中でも高知(土佐)で使用されていた土佐漆喰が注目を集めています。

土佐漆喰は一般的な漆喰とは違い少し黄味がかっているのが特徴で、
厚塗りで仕上げられる耐久性の強い漆喰です。

土佐漆喰と一般的な漆喰の比較表です。

※田中石灰工業㈱HPより引用

土佐漆喰と一般的な漆喰の材料としての大きな違いは「のり」を入れないことです。
一般的な漆喰は消石灰にスサを入れ、保水性・作業性を上げるためにのりを入れます。
「米のり」や「フノリ」を使った時代もありましたが、今現在では「つのまたのり」が多く使われています。

「のり」は水が掛かると戻る性質があるため、
一般的な漆喰は常に水がかかっているような部分ではもろくなることがあります。

土佐漆喰はワラスサを発酵させることで、そこで分泌される糖類が「のり」の役割を果たし、
のりを入れなくても保水性・作業性があり左官材料として使用できます。
「のり」を入れないので、一般的な漆喰よりも水に対して強いという特徴が出ます。

ワラを発酵させている模様


ワラを発酵させてものを塩焼き石灰と混ぜ、数ヶ月から半年程度、寝かせます。

寝かせている模様


この寝かせる工程が重要で、石灰とワラが馴染んできて、ワラの繊維が柔らかくなってきます。

今回、土佐漆喰の工場を見学しましたが、
石灰とワラをただ寝かせておけば土佐漆喰が出来るわけではなく、
左官材料としてしっかり仕上がるように丁寧に材料作りがされていました。

まずワラもそのままのものと入れるわけではなく、
稲藁の節を潰し、3cmの大きさに切り、使える大きさのワラだけを選別して、
室にいれ、水をかけ、発酵を待ちます。
(ワラの発酵も水分や温度に気を使わないとワラがカビてしまう事があり管理が大変だそうです。)

何ヶ月かして、ワラが発酵したものを石灰と混ぜ、練り合わせてまた数ヶ月寝かせます。
何ヶ月寝かせるかは、左官の好みと土佐漆喰の下塗り用、
上塗り用などの違いにより、変えることがあります。

このように、ワラを発酵させる段階から数ヶ月~半年程度を経て、製品としての土佐漆喰が出来上がります。



私たち施工者のところには袋状になった土佐漆喰が送られてくるのですが、
これを作るのにも非常に時間が掛かっていると思うと感慨深いものがあります。

アナログですが、非常に大切に作られている土佐漆喰。
当社ではこんな使い方をしました。



非常に丈夫で厚塗りが出来る土佐漆喰の特徴を活かして、
床・壁・天井を全て土佐漆喰で包んだ繭のような部屋です。
(第4回日本漆喰協会作品賞を受賞)
強度が出る土佐漆喰だからこそ、床にも使用することが出来ました。

また、初期の仕上がりは黄味がかっている土佐漆喰ですが、
紫外線に当たることで色が飛んできて白くなってきます。
そのため、同じ時期に仕上げた壁でも、
方角により、その後の日の当たり方で色の違いが出てくることがあります。
経年変化を楽しむというのも土佐漆喰の魅力の一つではあります。

土佐漆喰の施工上の特徴は厚塗りが出来ることです。
一般的な漆喰は1mmから3mm程度で仕上げるもので、それ以上は一度に塗ることが出来ません。
(砂漆喰は骨材を入れて厚みがつけられるようにしてあります。)
土佐漆喰の場合、5mm~8mm程度で塗ることが出来ます。
大きめなワラが入っていたり、材料の強度があるため、逆に言うと1mm程度の薄塗りは出来ません。
厚く塗ることで台風もしのぐ強い土佐漆喰の壁が出来上がります。

土佐漆喰の仕上げ方は大きく分けて3つです。

・土佐漆喰押さえ仕上げ


・土佐漆喰磨き仕上げ


・土佐漆喰 半田(ハンダ)仕上げ


押さえ仕上げは金ゴテでしっかりと押さえた仕上げです。
通常の漆喰よりもしっかりと押さえることでより硬質な仕上がりという印象があります。

磨き仕上げは、
土佐漆喰押さえで仕上げた後に、土佐漆喰のノロ掛けをして鏝で磨き仕上げをするものです。
顔がうつるくらいピカピカに仕上がります。
(ノロとは土佐漆喰の場合、材料の中に入っているものをフルイなどで取り除き、ペースト状にした材料の事を言います。)

半田仕上げは土佐漆喰に土を半分程度入れて仕上げたものです。
土を入れることで土の色を楽しめることと、
土の柔らかい表情が出るという特性があります。
色土を入れることで色の変化も楽しめます。

値段としては手間が掛かる分、磨き仕上げが一番高く、
押さえ仕上げがその次、半田仕上げが3番目という順番が目安です。

同じような漆喰に沖縄の漆喰(ムーチー)というものがあります。
高知と同じように台風が良く通る沖縄で瓦が飛ばないように押さえる屋根漆喰に、
このムーチーが使われています。

ムーチーも土佐漆喰と同じく「のり」を入れません。
そのため、雨風に対しても非常に強い材料になっています。
ムーチーの語源は「餅」でワラを擦り潰すため、
餅つきのように漆喰をついたところからムーチーと呼ばれるようになったそうです。

昔は珊瑚とワラを野積みし、雨風にさらすという方法から作ったと聞いたことがありますが、
現在は石灰とワラで作っています。

土佐漆喰は江戸後期から明治初期にかけて考案されたもののようです。
通常の漆喰では壁が持たないという高知の自然環境が独特な工法の土佐漆喰を作らせたのかもしれません。

高知特有のものだった土佐漆喰ですが、現在では情報と流通が良くなり、
高知以外でも施工されることが多くなりました。
ただ、まだまだ土佐漆喰をさわった事が無い左官屋さんもいますので、
頼む時は施工可能かどうか確認したほうが良いかもしれません。

現在では土佐漆喰の頑丈さ・強さを活かして竈も作られています。
土で中塗りし、土佐漆喰で仕上げた竈。
ごはんがふっくら炊けてとてもおいしいですよ。





そんな魅力的な素材である土佐漆喰。
是非一度、使ってみてください。

参考資料 田中石灰工業株式会社
http://www.tanakasekkai.jp/


最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

お問合せ先

有限会社原田左官工業所
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