珪藻土と漆喰について

珪藻土と漆喰について

今回は珪藻土と漆喰の違いについてです。

近年はいわゆる「健康・エコブーム」が話題になっていて、
塗り壁への注目は非常に高くなってきています。
実際に設計の方からの問い合わせ以上にホームページを見た一般のお客様より直接の問い合わせや、
施工依頼も多くなってきており、
左官仕上げ自体が注目されているのだなと実感します。

内装の仕上げの問い合わせで一番多いのは「塗り壁を施工したい」と言う問い合わせです。
具体的には漆喰や珪藻土になってくるのですが意外と知られていないのが漆喰と珪藻土の違いです。
その内容を短く簡単に漆喰と珪藻土の特徴を述べさせていただきます。

まず、一番の違いは原料の違い。
漆喰は石灰を利用します。
イメージ的には昔の学校の校庭にラインを引かれていた白い粉です。
(実際左官用に用いられる石灰は工業用石灰とは比べ物にならないほど上質な石灰です)
これらにワラやスサを混ぜ、海草などから採取した糊を混ぜて左官用の漆喰となります。
漆喰は古墳時代から使用され以降も城の外壁に用いられる他、一般住宅にも用いられ、
古くから左官壁=漆喰と言うイメージがあります。これが漆喰の主な原材料と特徴です。


(漆喰 押さえ仕上げ)

一方、珪藻土は基本的には堆積物の一種です。
海や湖に生息していたプランクトンの死骸が堆積して土のようになった所から採取されます。
これらの珪藻土は無数の穴が開いていて断熱性能や耐火性があり、
それ故に昔より珪藻土を削りだして七輪に使用されていました。
その他にも脱臭性能や吸放湿性能があることから
ここ15年ぐらい前から左官材料として一気に利用されるようになりました。


(珪藻土 こて波残し仕上げ)


漆喰と珪藻土を比較する際に原材料以上に身近な違いがあるのが自硬性です。
漆喰は空気中の二酸化炭素と反応して固まっていくのに対し、
珪藻土そのものは乾燥してもボロボロ崩れてしまいます。
そこで珪藻土建材メーカーは石灰やセメントや粘土、そして合成樹脂等を添加する事により
硬化させて左官壁として成立させています。
特に合成樹脂に関しては賛否両論で、施工性が良くなりますが樹脂=天然ではないと言うイメージがあり、
どちらが正しいかは議論の分かれるところです。

この「何かを入れる事により」と言うのが非常に大きなポイントで
「天然素材100%」と謳っている建材メーカーさんもありますが、
詳細なデータは建材メーカーさんのマル秘レシピになっています。
このように書くと「本当は怪しい成分が入っているのでは?」と感じられてしまうかもしれませんが、
ホルムアルデヒドの放出基準であるいわゆるフォースターの基準値はクリアしているので問題は無いと思います。(フォースターの基準に関する話は細かくなってしまうのでここではあえて触れません)

逆に漆喰に関しては自分から固まるので、
簡単に言いますと「余計なものを足さなくていい」と言う考えがあります。
それ故にシンプルではるか昔から左官材として成立している理由がわかると思います。

今までの話だと珪藻土に関してはあまりメリットが無いと思われるかもしれませんが、
珪藻土は漆喰よりも吸放湿性能が高いです。
また、施工もしやすく施工金額も安い。そして原材料自体も安い。
それ故に建材メーカーとしても作りやすいため、お手軽に塗り壁の良さが体感できます。
逆に漆喰は珪藻土よりも吸放湿性能が若干低いのと施工の難しさがあります。


(漆喰仕上げ 原田左官オリジナル漆喰「フルーフレ」)

フルーフレについての詳細はこちら
Webカタログ:オリジナル漆喰「フルーフレ」
https://www.haradasakan.co.jp/webcatalog/webcataharada/webcataff/

漆喰を塗るためには珪藻土よりも熟練の技術が要求される場合が多いです。
と言うのも漆喰は乾き方により仕上がりの風合いが変わります。
吸放湿性能や環境性能には影響が無いのですが
仕上がり方によっては色むらが出てしまい肌合いが変わってしまう事があります。
技術のある職人が乾き具合を見極めながら仕上げていかないと綺麗な仕上がりになりづらい。
その点が漆喰を塗ることの難しさとなります。
ただ、近年は漆喰もパターン付けをすることにより施工しやすくなっています。


(漆喰スパニッシュ仕上げ)

近年の傾向としてはインターネットや文献などでよく調べたお客様の中には
「珪藻土は樹脂が入っているからダメだ」と言う方もいらっしゃいますが、
樹脂にしてもガムに使われるような、
健康に害が無い樹脂が利用されているのがほとんどなので直接的な害は無いと思われます。

また、以前海外で「珪藻土は発ガン性がある!」と言う報告が上がりました。
確かにリストには挙がっていますが、同じ項目にはお酒(アルコール)も入っていて、
珪藻土の粉塵が舞うような状態で生活したらもしかしてガンになる可能性があるという程度のレベルです。
また、これらの意見に対しての材料メーカーの回答として、樹脂を使わない珪藻土もあります。


(サメジマコーポレーション「リターナブルパウダー」)

注意したいのは、お客様によっては許容範囲が違いますし、
珪藻土メーカーさんにも言い分はありますし環境性能の基準はクリアしている事実もあります。
しかしこの事実を知っていてお客様に提案する、しないとでは雲泥の差ですから、
こういう報告や特性が有るという事は知っておいたほうがいいと思います。

個人的な考えということを前置きして述べさせてもらいますと、
気軽に塗り壁の良さを体験していただきたいお客様には珪藻土を、
より天然志向のお客様には漆喰をオススメしています。
しかし、市販の漆喰の中に樹脂を入れて施工性や仕上がりをより良くしている漆喰があるのも事実です。
なので、お客様の求めるレベル、予算、望まれる仕上がりをよく把握し、
メリットとデメリットをしっかりと話しながら決めるのがいいと思います。


(漆喰 本漆喰仕上げ)

内装の壁の仕上げは毎日直接目にしますし、肌で触れる非常に重要な部分です。
現在はエコや天然志向がブームですし、
新築やリフォームにしても競合見積を取られてしまう時代で予算に限りはありますが
今求められている新築・リフォームは「オンリーワン」だと思います。
塗り壁は塗り方によって絶対同じにならないプレミアム建材です。
是非アピールツールとして塗り壁をオススメしていただければと思います。


珪藻土仕上げ(クロスの上に直接施工)

非常に奥が深い塗り壁ですが、コーディネーターやデザイナーの方、リフォームエンジニアの方には、
左官以外にも様々な分野の知識が求められ、左官の事を深く追求する時間も少ないと思いますので、
ご不明な点が有りましたら遠慮なくお問い合わせください。
このメールマガジンの名前の通り「案内人」のお役を務めさせていただきます。

珪藻土・漆喰などの施工例などはこちら
Webカタログ:天然素材
https://www.haradasakan.co.jp/webcatalog/webcatasakan/webcataten/

漆喰・珪藻土の良さについてはこちらから
「塗り壁の力」ページ
https://www.haradasakan.co.jp/paint_power/


施工内容につきましては下地等の条件により上記内容での施工が出来ない場合があります。
詳細な施工や施工条件はお問合せください。

以上、非常に長くなってしまいましたが、
珪藻土と漆喰の違いについてお話しをさせていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございます。次号もお楽しみに。

お問合せ先

有限会社原田左官工業所
113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1
電話番号:03-3821-4969 FAX番号03-3824-3533

左官のミライ通信「Sakan Concierge(左官案内人)」

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