貧困と環境問題を同時に解決 サスティナブルキャピタリズム ガーナのMAGO MOSAIC
代表の原田です。
今回は貧困問題と環境問題を同時に解決する画期的な仕上げ材、ガーナのMAGO MOSAIC(
マゴモザイク)についてです。
近年、社会課題への意識の高まりから、空間デザインにおいてもサステナビリティや社会貢献といった要素が求められるようになりました。
今回は貧困や環境問題などの社会課題の解決を手助けする仕上げ材の紹介になります。
MAGO MOSAIC(マゴモザイク)とは
「MAGO MOSAIC」とは、ガーナの首都アクラにある世界最大級の電子機器の墓場「アグボグブロシー」で回収した廃棄物を利用したモザイクタイルです。
電子機器やエアコンなどの筐体を10-20mm程度の大きさのチップにし、ガラスネットに張り付けたモザイクタイルのシートです。
こちらがシートとしての完成品。

MAGO MOSAIC(マゴモザイク)
このようにシート状になっています。

製品としての完成品はこちら。
通常はモザイクタイルのように目地を詰めて完成です。

シート状になっているので小口も張り込むことが出来ます。

MAGO MOSAIC(マゴモザイク)開発秘話
アーティストであり社会活動家の長坂真護(ながさかまご)氏と原田左官の出会いをきっかけにこのMAGO MOSAICの製造プロジェクトがスタートしました。
長坂真護氏との出会い
長坂真護氏(以下、真護氏)とは日本橋三越の展覧会で初めてお会いしました。

その時に真護氏から「ガーナの電子機器のゴミでアート作品を作り、1,000万円以上の値段が付いたことがあった。その時サスティナブルキャピタリズムという概念を得た。その収益をガーナに雇用と産業を作ることで還元し、社会課題を解決して資本主義のバグを取り除く。その概念がサスティナブルキャピタリズム(持続可能な資本主義)だ。」というお話を聞き、感銘を受けました。

資本主義はどこか椅子取りゲームのようなところがあります。よいポジションを取ろうといつまでも競争がつきまとう社会です。競争が過度になり、受け取りたくない厄介なカードを押し付け合った結果、弱者に抜けられない経済的困難状況を与えてしまう、環境破壊に繋がる、という構図もあります。
本来はその国で処理や分解されるべき電子機器のゴミがアグボグブロシーという場所に集まってくるのもそういった構図の一部なのかもしれません。
この場所には本来は存在しえないガーナ国外の電子機器のごみが捨てられています。
世界中から集まってくる電子機器のゴミ、それをアート作品に使用し、価値を生み出すことを実現したのが真護氏。
アートで生まれた価値をガーナに還元し、「文化」「経済」「環境」のバランスを取りながら持続可能な社会を目指しています。
還元方法も寄付ではなく、環境改善や雇用創出などに出資。寄付は一度で終わりですが、その場所での事業を作り、残せばその先も続いていく。
環境の改善や雇用を生み出す活動の一例として、ガーナ人を雇用し、ビーチクリーニングを実施、電動スクーターの製造など様々な事業をガーナで行っていることが挙げられます。
これがサスティナブル(持続可能な)キャピタリズム(資本主義)を目指すというもの。資源を取り合って食いつぶすのではなく、あるものを活用して価値を見出していく。サスティナブルキャピタリズム(持続可能な資本主義)という概念のお話しを直接聞いて、深く理解することが出来ました。

長坂真護氏のガーナの廃材を使った作品

長坂真護氏のガーナの廃材を使った作品
ガーナ・アグボグブロシーの問題点
世界最大の電子機器の墓場と言われている場所は、貧困と環境の問題が発生しています。ゴミが捨てられた場所には作物は育たず、地域の人達の職が奪われます。また、ゴミが集まるとゴミを捨ててもよい場所(=ゴミ捨て場)になってしまい、新たなゴミが集まってきてしまいます。

このスラム街の人たちのなかで、電子機器のごみをガソリンなどをかけて野焼きし、中から金属を取り出して生計を立てている人がいます。電子機器を焼くことはダイオキシンなどを発生させ、そのガスを吸うことで若くして命を落としてしまう。また、環境を破壊するものになっています。


それをストップさせるために、真護氏は作品で得た収益でガスマスクを買い、現地に配り、野焼きではない廃棄物の処理方法を考えたそうです。
廃材を活用したアートの他、現地アーティストの育成、廃材の家具や建材への活用、資源化の取り組みを行っています。
原田左官としての協力
真護氏と出会って、サスティナブルキャピタリズムという概念で世界を救う取り組みにとても共感を覚え、原田左官としても何か協力できないかという気持ちが沸々と湧いてきました。
廃材利用としてすでに建材になっていた「MAGO BLOCK(マゴブロック)」を拝見し、当社でもテラゾ仕上げに活用する方法を考え、廃材チップをテラゾに埋め込んだ「MAGO BLOCK by SAKAN」を開発し、テーブル天板などの用途で商品化されました。

「MAGO BLOCK by SAKAN」の施工例


MAGO MOSAICの開発
それに加え、ガーナで雇用を産むために、現地で製造するものができないかと考え、廃材や廃材のチップを送ってもらい、試作を重ねました。


試行錯誤の結果、廃棄物でつくるモザイクタイル「MAGO MOSAIC」の製作につながりました。
廃材で大きなものはやはり仕上げ材として使用しにくいので、ガーナでチップ形状にしてもらい、チップをシート状にすれば、汎用品となる仕上げ材にできないだろうか?
その仮説からモザイクタイルのシート案が出ました。
ガーナから廃材チップをもらい、当社の職人さんたちに協力してもらい、試作をトライ。
メッシュシートに廃材のチップを付け、

モザイクタイルシートを作成。

それをタイルのように張り込み、セメント目地を詰めます。

左がタイル張り工程を加えてを加えて完成したもの、右はシート状の製品です。

強度や仕上がりなどの点をテストします。
しっかりふき取っていると、廃材が輝きを増し、アート作品のように見えます。

MAGO MOSAICの試作品は2024年のBAMBOO EXPOという展示会にも出品し、高評価をいただきました。


ガーナへ
「MAGO MOSAIC」の試作品ができた後、真護氏からガーナへの渡航に誘っていただき、現地に行きました。

その日はちょうどMOONFesという真護氏のコミュニティのお祭りを行なっていて、ガーナの人たちのパワーに圧倒されました。


現地ではこのモザイクシート製造の指導をしました。
これがチップにする前の廃材。

これを細かく加工し、チップにします。

これをガラスメッシュのシートに張り込みます。
現地で今後製造できるように指導します。
指導というとカッコいいですが、身振り手振りで伝えながら、一緒に作るという感じです。

チップの選び方、チップを貼る間隔の捉え方、どのように貼ればきれいで丈夫か?など


最初は戸惑いましたが、最終的には現地のガーナスタッフたちと協力して試作を無事に完成させることができました。



ガーナのスタッフのテスト施工の感想です。
「今回学んだ技術で良いものを作り、日本に送ります!」
「トライ&エラーを繰り返し、良いものを作れるように頑張ります。」
現地での製造
その後、日本とガーナをオンライン繋ぎ、何度か製造の指導をしました。
呑み込みが早いスタッフもいて、コツがつかめるとどんどん仕上がりが良くなりました。
理解した人がリーダー的存在になり、分からない人に伝えていく。そうなると組織が動き出します。そういうチームビルディングのスタートを見た感じでした。
社会問題の解決へ
こういった物語の上で、この「MAGO MOSAIC」は製造されています。
「MAGO MOSAIC」は、単なるモザイクタイルではありません。
このタイルを使うことで、以下の3つの社会問題の解決に貢献することができます。
1m2使用すると ゴミを1kg減らすことができる
1m2使用すると CO2を2kg減らすことができる
7m2使用すると ガーナスタッフ1名分の雇用を創出できる
(数量については概算での換算です。)
MAGO MOSAIC国内での展開
この「MAGO MOSAIC」は日本でも販売が開始されました。
社会問題を解決しながらも、空間に彩りを与えることができます。
空間デザイナーの皆様、そしてサスティナブルキャピタリズムに興味がある皆様、
「MAGO MOSAIC」を通して、私たちと一緒に持続可能な社会の実現を目指しませんか?
ご興味があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
■お仕事に関するお問い合わせフォーム
ガーナでの施工指導についてはYouTubeにも掲載されています。
ガーナ・アグボグブロシーの状況は断片的なものです。一部偏った情報もあるかもしれません。ご了承頂ければと思います。
この記事を書いた人
有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ