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左官のミライ通信

掻き落とし仕上げ(原田宗亮)

投稿日:2016年02月29日 (月)
カテゴリー: 特殊左官工事

掻き落とし仕上げ(原田宗亮)

 

今回はセメント掻き落とし仕上げの可能性についてお話させていただきます。
リシン仕上げとも言いますが、まれに吹付と混同される方がいます。
リシン掻き落とし仕上げとリシン吹付仕上げは別のものです。

セメントの掻き落とし仕上げのことをよくリシン掻き落としと言います。
大正時代にドイツから輸入された塗り壁材の商品名「リシンプッツ」が
大衆化して名称になったようです。
ざらざらした面が特徴の仕上げで外装によく用いられています。 

そして、その表情を真似したものが吹付リシン仕上げです。
昔はプラスター系、今はアクリル系で吹付の工程でリシンの目を出す仕上げ方です。
同じようにザラザラな面ですが、比べると表情が違います。

あくまで最初にセメントのリシンがあって、それに似せたものがリシンの吹付仕上げです。

今回は塗りもののセメント掻き落とし(リシン仕上げ)についてのレポートです。
セメントのリシンはカラーモルタルに骨材などを混入して塗りつけ、
硬化する前にケンザン、ワイヤーブラシ、トタン板を鋸歯状に加工したものなどで
引っかく仕上げです。

カラーモルタルを塗りつけて、硬化前に掻き落とすため、そのタイミングを見極める事が重要です。
軟らかいうちに掻いてしまうと上塗りをはぎ落としてしまうことになり、
硬化しすぎてしまうとセメントの強度が出てしまい、掻き落とすことが困難になってしまいます。
材料の硬化時間を考えながらの作業になり、夏と冬とでは工程も変わります。

夏場は材料の硬化が早いため、
朝の気温が低いうちから塗りつけ始め、午後には掻き落とせる状態になります。
冬場は硬化が遅いため、
材料を塗りつけて、翌日に掻き落としをすることになります。
気温と工期を考えながら、場合により石灰(セメントの硬化を遅延させる)と、
セメント急結材(セメントの硬化を早くする)を配合して施工していきます。
塗りつけて金ゴテ押さえをして、後で掻き落とせるため、
掻く方向を一方向にしたり、道具を工夫すれば、面白い仕上げが出来ます。

掻き落とすところを部分的に残せば、文字を作ることも出来ます。



骨材の大きさ、色なども組み合わせれば無限の仕上げ方があります。
材料を彫り込んで窪みに他の色を組み合わせればこんなことも出来ます。



様々な可能性を秘めた掻き落とし仕上げを是非ご検討下さい。
見本サンプルから作成します。


最後までお読みいただきありがとうございます。次号もお楽しみに。