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左官のミライ通信

現場レポート「MATTEOBRIONI® Wabi」静寂の経年変化の壁面

投稿日:2026年05月12日 (火)

代表の原田です。
今回はイタリアの土の仕上げ材「MATTEOBRIONI®(マッテオブリオーニ)」のWabi(ワビ)仕上げの現場レポートです。

現場は築120年の古民家。

築120年の古民家

こちらの現場で経年変化を感じる壁、MATTEOBRIONI®(マッテオブリオーニ)の「Wabi」仕上げを施工しました。

仕上がりがこちら。

MATTEOBRIONI®(マッテオブリオーニ)の「Wabi」仕上げ壁
古民家に施工したMATTEOBRIONI®のWabi仕上げ壁

浜松のシイキ写真館様にて、この仕上げを行いました。
写真館という「光」を操る空間において、背景となる壁面には、単なる色調以上の「奥行き」と「静謐さ」が求められます。お客様のご要望を、私たちが今回、どう解釈し、職人の手でどう具現化したか。その裏側を少しだけ解説します。

鏝圧が描く、目に見えない「吸い込み」のグラデーション

今回のMATTEOBRIONI®(マッテオブリオーニ)の「Wabi」仕上げは、あえて表情を抑えたフラットな鏝使いがポイントです。単に平滑に塗るだけではありません。

我々が意識したのは、目には見えないレベルの「鏝圧の微差」です。 仕上げに塗布する保護剤(FN05/06:石鹸液)は、仕上げ材の密度によって吸い込み方が変わります。意図的にわずかな密度の揺らぎを作ることで、トップコートをかけた瞬間に、天然土特有の柔らかい色ムラが浮かび上がるよう仕上げています。

古民家に施工したMATTEOBRIONI®のWabi仕上げ壁

過度な吸い込みによる「沈み」や、逆に吸い込みきれない「テカリ」を排除し、あくまで自然な素材の呼吸を感じさせる肌合いに仕上げています。

壁と床、異素材の「色調同期(シンクロ)」

今回の難所は、壁と床を地続きのように見せる連続した仕上げでした。

MATTEOBRIONI®のPolvere色のWabi仕上げの壁と床
(マッテオブリオーニWabi仕上げ 壁Polvere:床Polvere特注仕様)
MATTEOBRIONI®のPolvere色のWabi仕上げの壁と床

マッテオブリオーニという材料は、壁用と床用では材料のグレード(耐摩耗性等)が異なるため、同じ品番の色を選んでも、乾燥後の発色には必ず差異が生じます。

そこで、床用のトップコートに微細な調整を加え、壁に塗布したFN05(白石鹸)のトーンへと極限まで寄せました。

「素材の強度は変えつつ、視覚的なノイズを消す」。

お客様が描いたシームレスな空間を形にするための、現場での色を調整し、仕上げました。

「汚れ」ではなく「物語」を塗る:FN06のエイジング

特に注目していただきたいのは、Latte(ラテ)色にFN06(黒石鹸)を施した部分です。 黒石鹸によるエイジングは、一歩間違えればただの「汚れ」に見えてしまいます。私たちは、長年使われてきた土壁や、土壁の内側から滲み出た錆の浮き方を観察し、その「時間の重なり」を再現しました。

MATTEOBRIONI®のLatte色のWabi仕上げの壁と床
(マッテオブリオーニWabi仕上げ 壁Latte)
MATTEOBRIONI®のLatte色のWabi仕上げの壁と床

「古びているが、美しい壁」。この質感を両立させることで、写真の被写体をよりドラマチックに引き立てる背景が完成しました。

施工中・仕上がり後についてYouTubeでも紹介しています。

設計・空間デザイナーの皆様へ

MATTEOBRIONI®(マッテオブリオーニ)は、土の表情で、壁だけでなく床や什器まで一気通貫で仕上げられる、表現力を持っています。

  • 「固く叩きしまった土の土間の質感」
  • 「数十年使い込まれたようなアンティークな土の質感」

カタログだけでは伝わらない、現場での「引き算」や「足し算」によって、空間の格は変わります。意匠のこだわりを、ぜひ私たちが持つ「手のひらの感覚」で形にさせてください。

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この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

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