【左官情報】土壁が不燃認定を取得!様々な空間で使用しやすいものに。

【左官情報】土壁が不燃認定を取得!様々な空間で使用しやすいものに。

今回のミライ通信では土壁が不燃認定を取得したことについてお伝えします。

■目次

  1. 土壁の不燃認定について
  2. 従来の内装での土壁仕上げの材料
  3. 今回の土壁が不燃認定取得を取得した意味
  4. 既存土壁も不燃材として扱える
  5. これからの土の仕上げの考え方

土壁の不燃認定について

ようやく土壁が不燃認定の素材として認められました。

「え、土壁って不燃材料じゃなかったの?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

住宅内部の土壁の例
(住宅内部の土壁の例)

土壁が燃えない、燃え広がらないというのは感覚的にもわかることなのですが、建築基準法上では今まで土壁は不燃素材として認定されていませんでした。
そのため、見直され土壁が再び採用され始めた現代においても、土壁は大きな空間に使用しにくい仕上げ材になってしまい、空間に安らぎを求める風潮が広まっていく中でも、公共建築や大規模空間に土壁を使用することが少なかったのです。

それが今回、左官組合(日左連)と大学等の協力により令和4年5月31日に国土交通省から告示され、正式に土壁が不燃材料として認定されました。
不燃材料として認定されたため、大規模な空間やキッチンなどにも内装制限を気にすることなく使用できるようになりました。

正式文書として国土交通省のWEBサイトに「不燃材料を定める件の一部を改正する件等の施行について」と掲載されています。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001488605.pdf

従来の内装での土壁仕上げの材料

では今まで、土の仕上げはまったく使われてなかったかというと我々の理解ではそうではないです。内装制限のかからない空間では土壁は問題なく使われていましたし、内装制限のかかる商業空間においてもいままでは左官のメーカーさんから出ている土壁(または土壁調)を使い左官仕上げを作っていました。
(土に樹脂が混入されているものを土壁というかどうかの議論はありますが、ここではそのような土壁や土壁調仕上げも含めて、土壁とお伝えします。)

店舗での不燃認定ありの土壁の施工例

店舗での不燃認定ありの土壁の施工例

メーカーさんで製造しているものなのでほとんどのものが不燃認定を取得しています。土の風合いを内装の大面積仕上げることができ、表面強度があり使いやすいものが多いです。

左官のメーカーさんから出ている不燃認定を取得している土壁仕上げ・土壁調の仕上げの代表的なものはこちら。

土壁空間 (フジワラ化学)
フジワラ化学の土壁空間

季の普(ときのふ) (四国化成)
四国化成の季の普(ときのふ)

ジョリパット爽土 (アイカ工業)
アイカ工業のジョリパット爽土

京壁 (富士川建材)
富士川建材の京壁

 (※土壁・土壁調仕上げの一部です。それ以外の商品もたくさん出ています。)

これらの材料は不燃認定番号を取得しています。内装制限にとらわれず使用することが出来ます。(だいたいの商品が石膏ボード12㎜に施工する場合となっています。)
これらの材料はいわゆる現場配合の土壁とは異なり、樹脂も混入されています。水系の樹脂でどの製品もF☆☆☆☆を取得しています。土に樹脂が混入されることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、樹脂が入ることで色の安定性や施工性向上など良い点もあります。本来は昔ながらの土壁を施工したいところですが、経験のある施工者不足や効率性、夏場・冬場でも施工できるなど近代の現場の様々な条件をクリアするには樹脂に頼ることも必要な部分があるのではないかと私は考えます。

土壁でも昔から糊土仕上げというものがあります。左官土にみじん砂などを混ぜ、そこに海藻糊を入れて仕上げる壁です。海藻糊は作業性向上のために入れます。(そこにワラスサなども添加されます。)

糊土仕上げ=土+みじん砂・ワラスサ+海藻糊
これが昔、和室などにも使われた土壁の一つです。

それを現代風に考えて海藻糊を水系樹脂に置き換える、
現代版土壁=土+みじん砂・ワラスサ+水系樹脂

賛否両論あるとおもいますが、樹脂を入れることで強度を出し使いやすくする、樹脂を入れることで色ムラを少なくし、施工性を良くするなどのメリットもあり、使える場面は多いと思います。

現場配合の土壁は職人の勘と経験が生かされます。丈夫で仕上がりの肌も安定している土壁を仕上げるには腕のある職人さんが必要になります。
日本が近代化の流れで効率と安定性を求めていった結果、熟練職人だけでなく、ある程度経験のある若手の左官職人さんでも扱いやすいように、ニーズに合わせて各メーカーさんが独自開発の土壁仕上げ材を誕生させていったのではないでしょうか?
このような安定したメーカー品土壁も上手に使っていくのが良いと思います。

不燃土壁の施工例
キッチン壁面の不燃土壁施工例
キッチン壁面に土壁を施工
物件名:焼鳥篠原
設計:INVI


今回の土壁が不燃認定取得を取得した意味

では安定して比較的使いやすい、不燃認定も取れているメーカーさんの土壁がある中で、今回、従来の土壁が不燃認定を取得したというのはどんな意味があるでしょうか?

今回の土壁不燃取得の最大の意味はこれです。
「様々な場所の土が壁土として使えるようになった。」

伊豆各地の土
(様々な土の例:伊豆各地の土 土の採取には許可を取っています。)


土壁という大きなくくりで不燃認定を取得したことで、現場調合の土壁が不燃認定されます。そのため、この色の土を使いたい、地場の土を使いたいなどその現場独自の土壁を不燃認定の壁と認められるのが今回の認定の最大のメリットです。

土であればなんでもOKかというとそうではなく、認定されるための注意点もあります。

主な注意点はこちら。

  • ・厚み10㎜以上の土壁であること
  • ・同じ土を10㎜以上塗ること
  • ・混入されるワラなどの有機物量は質量比の3.2%以下とすること
  • ・内部であれば石膏ボード9.5㎜以上のものに下塗りプラスターを入れたもの


同じ土を10㎜以上塗ることが条件になっており、左官で言うと2回塗り仕上げが通常の仕上げ方になります。仕上げの肌としては自ずと中塗りの肌になり、仕上げ名というと「切り返し仕上げ」(または中塗り仕舞い)。繊細に抑えた和室壁の肌というよりは少し味のある土壁の肌になります。

土壁:味のある仕上げ方の例
味のある土壁の仕上げ方例

ワラなどの量が質量比の3.2%以下ということですが、これはまったく問題ないことです。土と砂を配合した乾燥状態の材料に質量比で3%ものワラを入れることは施工上ありえないからです。土壁を練っているところを見ると大量のワラを入れているようですが、通常の配合は質量比ではおおよそ1%くらいだそうです。

ワラはフワフワしていて重さは無いので大量に入っているようでも、重さとしては大したことがないです。
それを一番不利な配合比3.2%ものワラを入れて不燃試験を通しています。
お客様から「土壁はワラが燃えるのでは?」という質問を頂くことがあっても、上記のことからワラ単体では燃えるが、土壁に配合され施工された壁については、ちゃんと不燃認定試験を通っていて全く問題ないとお伝えすることが出来ます。

内部であれば下塗りをし、その上に2回塗りで10㎜の厚みに土を塗ります。
下塗りは石膏プラスターなどとなっておりますが、その他のものでも土壁に対して実績のある下塗り材であればOKのようです。

日左連の技術的助言として、土壁を不燃認定の仕上げにするには、いずれにしても土壁に知識、経験のある左官職人が携わることが重要だと伝えられています。
土を仕上げ材として強度と仕上がりについて責任が持てることが条件になります。

また、使う土壁については限定されていません。
この土しか不燃認定にならないという縛りはありません。
そのため、従来左官で使われていなかった土や現場発生の土、現地の土も不燃認定の壁として使うことが出来ます。

現場での土をふるいにかけ、左官用に調整した例
ふるいにかけて左官用に調整した土

これにより土壁の可能性がより広がりました。

もちろん、今まで使われていない種類の土を使用する場合は、強度があるか、目標の仕上がりになるかを試す必要があります。
試験塗りや試験体作りを行い、テストすることが重要です。

土の試験塗りの様子
(確認のための試験塗りの例)

しっかり使えるものか確認する必要はありますが、今回の認定により様々な土が仕上げ材として使用できるようになりました。
これを機会に若い左官職人さんたちにも土壁に興味を持ち、現場で土を配合して塗ることが広まっていけば、技能伝承ができ、左官のミライも明るいと思います。


壁土を不燃材料として建築物に用いる場合の情報について、詳しくは日左連のWEBサイトに掲載されています。

壁土を不燃材料として建築物に用いる場合の壁土仕上げ標準施工要領
http://www.nissaren.or.jp/wp-content/uploads/2022/06/f30fa9a6076c8d9da121bbd182d89701-1.pdf

日左連からのコメント等
http://www.nissaren.or.jp/17589


既存土壁も不燃材として扱える

また、今回の認定により、既存にある土壁も不燃材として扱えるようになりました。それにより、建物の用途変更で土壁を活かす・残すことがやりやすく、また目的のあることになりました。

これからの土の仕上げの考え方

これからは壁に限らず、床やテーブル・家具にも土を使用するのがいかがでしょうか?

熱海石舟庵様:伊豆の土を使ってテーブル・椅子を仕上げた例
伊豆の土を使ったテーブル・椅子
(土の色がそのまま出ているのが特徴。)

伊豆の土を使ったテーブル・椅子
(デザイン:アーキブレイン白川様)

建築基準法の不燃認定についてですが、床や家具は不燃認定の範囲からは外れているそうです。そのため、床に独自配合で土を入れた三和土風仕上げ、家具に土壁仕上げをするというのは上記の不燃認定の条件に当てはまらなくてもどんどん使うことが出来ます。
もちろん見本を作り、強度や仕上がりの確認は必要ですが、独自配合の土壁で家具を仕上げるということが左官業界でも広まっていくと良いですし、当社もこれからも取り組んでいきたいです。

その流れの中、原田左官では現在、テーブル・家具に塗れる土の仕上げ材を扱っています。
「風土~FUUDO~」という天然土の左官仕上げです。
特徴は薄塗りでも丈夫でひび割れが出ません。
土壁というとボロボロする・粉っぽくなるというイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、「風土~FUUDO~」はボロボロすることがなく、土の優しい風合いを触って体感できる優しい仕上げ材になっています。

テーブル・椅子、家具・天板に土を塗る
山口県長州土の風土仕上げによるテーブル天板
(風土:山口県長州土の仕上げ)

本聚楽土仕上げの風土による棚板
(風土:本聚楽土仕上げ)


室内の階段部分に塗る。
黄土を使った風土の階段
(風土:黄土、階段に施工)

新しい工法ではエポキシ樹脂工法と組み合わせて木造の床にという使い方も考案中です。
木造:框部分に風土を施工
框部分に風土を施工

框部分に風土を施工

今回の不燃認定取得をきっかけに土壁・土の仕上げをどんどん取り入れてみてはいかがでしょうか?
きっと安らぎの空間を作ることが出来ますよ。
私としても今回のことをきっかけに土壁・左官がより広まっていくと嬉しいです。

土の仕上げ「風土~FUUDO~」についてWEBカタログはこちらから。
WEBカタログ:土の仕上げ「風土-FUUDO-」


この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

お問合せ先

有限会社原田左官工業所
113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1
電話番号:03-3821-4969 FAX番号03-3824-3533

左官のミライ通信「Sakan Concierge(左官案内人)」

発行元:有限会社原田左官工業所・株式会社エイチアール
発行責任者:有限会社原田左官工業所 原田宗亮
HomePage:http://www.haradasakan.co.jp/
メールアドレス:sakan@haradasakan.co.jp

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