左官での石膏彫刻

左官での石膏彫刻

左官での石膏彫刻 (原田宗亮)

 

彫刻というと何かを彫って形を作り出すことを想像されますが、
左官で言う彫刻は、型に流し込んだり、塗り足し盛り上げて作るものの事を指すことが多いです。
具体的には石膏彫刻、セメント彫刻、漆喰彫刻などです。(漆喰の場合は主に鏝絵と言います。)

今回はその中でも石膏彫刻についてのお話です。

左官の石膏彫刻は美術などでよく使用する焼き石膏を使用します。
寒天やシリコンゴムなどで型を作成し、
そこに焼き石膏を流し込んで石膏彫刻を作ります。
焼き石膏は硬化が早く、30分くらいで型から外すことができ、また、流動性が高いため、
複雑な模様、細かい模様を再現するのに、向いています。

手順としては

1.原図などを元に、油粘土等で実際に石膏で作りたいものと同じサイズの原型を作る
2.原型に寒天やシリコンゴムなどを流し込み、母型(おもがた)を作る
3.母型に離型材を塗り、焼き石膏を流し込む
4.30分程度で脱型し、型を清掃する

となります。

型を作り利点としては、同じ形を多数作ることが出来ることです。
同じ飾りを違う部屋でも使う時など、鏝で盛り上げて仕上げるよりも、
型を使用したほうが早く仕上がります。
シャンデリアの中心飾りなどに使用されることが多いです。

中心飾り取り付け


中心飾り完成


石膏蛇腹造形
また、石膏を使って天井と壁の取り合いの廻り縁の飾りを作ることもできます。
これは主に蛇腹模様をつけることが多く、蛇腹模様を作るのに平面の板に石膏を盛り付け、
その模様の型で引くため、「置き引き工法」と言われています。
ブリキなどで型を作り、焼き石膏を直線に盛り上げたところに、型を引き模様を作成します。
模様の大きさにより、2段、3段に分けて作成することもあります。
作成したものを現場で石膏やエポキシなどで張り込み、
ジョイント部分を現場で補修し、目立たなくします。

盛り付け1


盛り付け2


型引き


完成


断面


モルタルや漆喰で蛇腹模様を作るときは焼き石膏よりもリードタイムが長いので、
現場で施工場所に塗りつけて型を引くこともあります。

モルタル型


直線だけでなく、ガイドを当てれば曲線も作成することができます。

このように見ると、
左官というより、美術屋さんのような仕事ですが、
左官の競技大会や技能五輪大会で今でも制作課題の一つとして残っている工法です。

競技大会の課題


最近での石膏彫刻の見所は、東京駅の円形ドームですね。
今回の東京駅の大改修は建築当初の形への復元工事でした。
建築当時は大きな鳥や動物のレリーフも石膏で作成していたようですが、
地震等への配慮もあり、GRGというグラスファイバーで強化された石膏で作られています。

全体


左官工法の石膏は半円の蛇腹引きなどです。
これは一部現場に残っているものを繋げているため、現場で作成しています。



石膏装飾はアカンサスなど植物の模様や花、鳥・動物をかたどったものが多く、
トラディショナルな印象ものもが多いのですが、
先ほどの東京駅や某有名テーマパークなどでも使用され、
そういった意匠の復活もあるようです。

是非、焼き石膏の左官工法をデザインに取り入れてはいかがでしょうか?

石膏装飾


写真協力:吉村興業

最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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