土壁の表現について

土壁の表現について

土壁の表現について (原田宗亮)

 

今回は土壁の一風変わった仕上げについてです。

土壁といえば、和室の京壁を思い浮かべる人も多いと思います。
今回は土壁でもちょっと変わった表現ができるということをお伝えします。

土壁の仕上げと言えば、本来は和室の壁のようにザラザラの肌を表わした仕上げが一般的です。
住宅の和室などに今でも塗られているあの壁と言えば思い浮かぶでしょうか。
現在、塗られている京壁は樹脂をベースにしているものがほとんどです。

京壁とは本来、関西地方で採れる味わいのある色土を塗って仕上げた壁のことを指します。
「京都の壁」=「京壁」と言っていました。
京壁は土とみじん砂・みじんスサ、場合によりツノマタノリなどを加え、砂の目が揃うように繊細に仕上げます。

きれいに砂の目が揃っているものは非常に美しく、左官の最高級の仕上げの一つでもあります。
それだけ材料作り・技術ともに難易度が高い仕上げです。
京都を中心に関西地方で施工されていた京壁が全国に一般的に広まったのは、
左官メーカーさんが樹脂をベースにした施工しやすい京壁風の材料を作ったからです。

樹脂入りというとそれだけで粗悪品と思われる方もいるかもしれませんが、
仕上がり感は本来のものと引けを取らないものもあります。
樹脂入りの京壁ができ、全国的に京壁仕上げが広まったのも事実です。
本物の京壁(変な言い回しですが、)と樹脂入りの一般的に広まった京壁の区別を付けるために、
樹脂入りのものを「新しい京壁=新京壁」と呼ぶ場合もあります。

因みに、京壁のことを聚楽壁(じゅらくかべ)と言うことがありますが、正式には聚楽壁とは京都の聚楽第というところで取れた色土を使い仕上げた壁を指します。
現代の呼び方では他の色の土を使った壁でも聚楽壁ということもあり、
また、左官のメーカーさんでも京壁を聚楽仕上げと言っているメーカーさんもあるため、
「仕上げの繊細な土壁=京壁=聚楽壁」というような呼び方で一般的には通っています。

最近では繊細に仕上げる京壁仕上げだけでなく、
中塗りの土壁の配合で少し荒々しく仕上げる「中塗り仕上げ」が採用されるケースが多くなっています。
中塗り仕上げは「中塗り仕舞い」「切り返し仕上げ」と地域によって呼び名が違い、仕上げる方法やルーツがそれぞれ違ったりしています。

いずれにしてもざっくりとした凸凹のある表情で土の温かみが感じられるということで
「土の中塗り仕上げ」が注目されています。




れ以外にも今では土壁をもっと荒々しく表現することも行われています。
現在放送されているNHK大河ドラマ「真田丸」。
この題字は世界的に活躍している左官職人の挟土秀平さんが飛騨の赤土を使って鏝で仕上げました。



こんな風にすると土壁も芸術作品のようですね。
挟土さんはこの壁のために専用の鏝を作り現場に臨んだそうです。



挟土さんの施工したものでは大手町の「アマン東京」にも土壁で自然を表現した壁があります。

挟土さんのように芸術的に昇華された土壁もあれば、素朴な土壁の表現もあります。
例えば、荒壁を塗った時に次の工程のために引っ掛かりをつけるように鏝を指していった檜垣も
模様として採用されています。


また、ワイルドな荒壁のままの状態やワラを入れて割れ防止をした荒壁を意匠として採用される場合もあります。




土の中塗り仕上げの凹凸を活かし、その上に石灰クリームをかけて仕上げた
和風カルチェラザータ仕上げという変わった土壁の仕上げもあります。

土壁は平らな仕上げだけじゃない。

いろんな表現ができる自由な土壁。

是非、いろいろな場面でお使い下さい。

参考・参照WEBサイト
NHK
http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/2000/226649.html

アマン東京
https://www.aman.com/resorts/aman-tokyo


最後までお読みいただきありがとうございました。

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